台湾の救急車に乗って台湾の人に謝りたくなった話

台湾と医療

先週末から土砂降りの雨が降り続き、冬に戻ってしまったかのような台北です。

みなさんいかがお過ごしでしょうか。

 

いまはおかげさまで元気ですが、実は台湾に来てから二回救急車に乗った事があります。

 

一回目は私がまだ台電大樓駅の近くに住んでいた時の事です。

 

台湾にもH&Mがあって、数日前そこでおしゃれリングを買いました。でもその時買った物はもともとサイズがあまり合っていなかったのです。

 

何回かそのリングをはめて出かけましたが、外すときに毎回指が少し痛かったのを覚えています。

 

その日の夜もいつものようにTVを見ながらそのリングをはめようとしました。それは人差し指では少し余ってしまうので、やっぱり薬指じゃないとダメかなあ。なんて思いながらはめていると、その日に限って左手の第二関節の奥にひっかかったまま抜けなくなってしまいました。

 

これはまずいとネットで調べると、石鹸や洗剤に指をつければ外れると出てきました。洗面器にお湯と洗剤をこれでもかと言うほど入れ、しばらく格闘しました。あたりは洗剤で滑りやすいし、ひどいことになりました。ですが結局取れませんでした。

 

洗剤・石鹸でダメならどうすればいいの?と、ネットで探すと、今度はタコ糸をリングに通して外す方法が乗っていました。でも、家にタコ糸が置いてある家ってそんなにないですよね?

 

気が付いたらあっという間に1時間もたってしまっていて、指の付け根が紫色になって腫れてきました。

 

怖くなってきて台湾人の知り合い数人にSOSのLINEをしましたが、みんな運悪く遠出していて、ある友人には「指がなくなったらどうするの?早く病院行きな!」と叱られる始末。

もう自分で何とかするしかありません。

 

病院行きな!はいいけれど、どの病院が開いているのかもよくわかりません。

 

薬指も冷たくなってきていて、ジンジンしてきました。とりあえず血流を保とうと指を心臓より高い位置に上げると、気のせいか少し痛みが治まるので、それでしのぎます。

 

その日もちょうど雨が降っていました。慌てた私は上着を着て、傘と貴重品だけを持って外に出ました。

 

アパートから通りまで歩いて2分ぐらいの所に、前から気になっていた東方医学の診療所があって、通りかかると運よく開いていました。なかに入り、受付の人に事情を話します「タコ糸のようなものはありますか?これ、何とかなりますか?」

 

受付の人は私の焦る心とは裏腹に、先に保険証と初診料を払ってくださいと言います。仕方がないので保険証と初診料を言われるがまま差し出して、少しすると先生が診察室に通して下さいました。

 

先生は「針を打ちましょう」と仰って、新しい針の袋を開けました。そして手の数か所に針をうちます。これで取れるから、しばらく待ってくださいと。

 

どうやら筋肉を緩める作用のあるツボに針を刺して下さったようなのですが、リングは第二関節に引っかかっているようなので、本当にそれで取れるのかと少し心細い気持ちでいました。

 

嫌な予感は当たるもので、先生の針の力を以てしてもリングは外れませんでした。

先生は「何もできなくて申し訳ない」と謝られ、保険証と診察代をすべて返してくださいました。ですが新しい針を何本か開封して使っていただいたのはこちらの方なので、かえって申し訳なく思いました。

 

時間だけがどんどん過ぎて行き、異国の地で些細な不注意から指が無くなるのかと思ったら悲しくて泣きそうになりました。

 

家に戻ってネットで調べると日本では消防署に指輪をカットする道具を置いているとあったので、この近くに消防署があれば行って、カットしてもらおうと思いました。

 

でも、台湾の消防署が日本と同じかどうかわからないし、消防署がどこにあるかわからないので、誰かに聞くことにしました。

大通りへ出ると一軒の調剤薬局がまだ開いていたので、そこに入って、店員さんにまた一から事情を話します。

 

お店には年配の男性店員さんが二人いて、私の話を聞くとそのうちの一人の店員さんが「それなら救急隊呼んだ方が早いから。いまから呼ぶから。心配しなくていいよ」と言ってくださいました。

 

その通りは、師大路というガイドブックにも載っている有名な夜市がある場所です。

 

日曜の雨の日で時間も遅かったため、幸い人通りは少なかったのですが、救急車なんて来たら目立って恥ずかしいです。それに病気でも怪我でもないし。そう告げましたが、お店の人は、

「救急隊が来るって言ってるから、心配しなくていいよ」と、救急車を待っているあいだ椅子に座るよう言った後、どこの国から来たのかとか、どこに住んでいるのかとか、いろいろ話を聞いてくださいました。

 

何とかなるとわかりホッとしたら、涙が止まらなくなりました。

 

泣きながら話をしていると、救急車が到着して救急隊の方数人がお店に入ってこられました。救急隊の方達は私の指を診てくださいますが、リングをカットできる器具は病院に行かないとないと説明され、病院で取ってもらうことになりました。

 

私は自分の足で歩けるのに、申し訳ないやら恥ずかしいやらで、でも指は紫色に痺れて長時間経っているし。複雑な気持ちのまま救急車に乗せられ、その間心拍や血圧を測る機械をつけたまま病院に搬送されました。搬送される途中も救急隊の方たちはとても優しく、励ましてくださいます。

 

台湾に何の貢献もしていないのに。台湾に税金を納めているわけでもないのに。台湾の皆さんはこんなに親身になって、こんなに親切にしてくださる。

 

ああ、日本にいたらそんなのは税金の無駄遣いだとか、自分でタクシーで行けとか叱られるんだろうか?台湾でも怒る人いるのかなあ?

 

台湾の皆さん、私の不注意で本当にすみません。と救急車の中で思いました。

 

病院に着いて看護婦さんに引き渡された頃には、安心して気持ちに余裕が出てきました。

結局病院では先生がカッターのようなものを使って、リングを少しずつカットして下さり、私の薬指は助かりました。

 

指の色も元に戻り後遺症も残らずに済みそうでしたが、無理に取ろうとして散々引っ張ったので、少しケガをしていて、そこが化膿していました。

 

念のため化膿止めの飲み薬を数日分出されましたが、特に何もなければもう病院には来なくて良いという事で、その病院にはその後、行っていません。

費用に関しては、救急車が有料だったらどうしようとどきどきしていましたが、ふつうに病院の治療費を払っただけで済みました。

 

たぶん思い出したくない記憶だったのでしょう。ずっと忘れていましたが、これを書いている間に、急に指が痛くなってきました。

 

これからも安全と健康には十分注意して生活していきたいと思います。

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