台湾では台湾語で話すんでしょう?という誤解

台湾基本情報

 

親日家が多く、日本との交流が盛んな国といってイメージするのはどこの国でしょうか?

 

そんな国のうちのひとつとして、あなたの頭の中にTAIWANの名前も上がっている事でしょう。

 

とても身近な国なイメージのある台湾ですが、台湾が地図上でどの辺りにあるのかや、台湾の公用語が何かを知らない人って、日本にはまだ沢山いるように思います。

 

かくいう私も、日本在住の台湾人のお友達がいたにも関わらず、彼女に台湾に招待されたその時に、はじめて、台湾がどこにあるのかを地図で探したような、そんな人でした。

 

ですから台湾という国名は知っていても、「台湾のことよく知らな~い」という、そんな人がたくさんいる事を、誰よりも理解しているつもりです。

 

台湾では台湾語で話すんでしょう?という誤解

 

実際、メディアや世間がいうほど、私の周りには台湾にそれほど興味がある人はいないようです。

 

台湾からの一時帰国中に知り合った日本人、日本での再就職に向けた面接のときの面接官、新しい職場の人たちなど、人と会う度にかならず発せられるのが、「台湾って台湾語を使うんでしょ?」という言葉です。

 

テレビやYouTubeで有名人が「毎回これ聞かれるんですが~」と言っているのを見て、「ふぅ~ん、そうなんだ~」と見ている私ですが、もう本当に、それと同じぐらい、人と会えばあった分だけ

「台湾人は台湾語を話すんでしょう?」

と言われるので、その度にモヤモヤ~っとした気分になります。

 

(自分の事は棚に置いておいてなんですが……。)

 

 

台湾で話されている言葉について

 

まず答えから言ってしまいますが、台湾の公用語は中国語(普通語)です。

台湾語ではありません。

 

質問もね、

「台湾って何語が標準語なの?」とか、

「台湾の人たちって何語で話すんですか?」と聞かれるなら、

 

ご存じないのですね?それでは、説明いたしましょう!

という気持ちにもなるのですが。

 

「台湾人は台湾語を話すんでしょう?」という先入観を持ってらっしゃるケースが殆どなので、まず台湾語というのはですね……と、そこから説明しなければならない事の方が多いような気がしています。

 

なぜ台湾は台湾語を話すと思われているのでしょうか?

 

日本人って日本国に住んで、日本語を使っているので、その感覚で行くと台湾という国では台湾語が話されているんでしょ?という発想になるのも、わからなくはありません。

 

そして台湾には、大人の事情によって、国として認めている国(国交がある)があったり、国として認めていない国(国交がない)があったりという問題もついて回って来ます。

 

そういった事が、余計に台湾といった小さな島の事を知るコトを困難にしている気がします。

 

 

世界で使われている言語と人口比率を見てみよう!

 

日本人はもう少し世界規模で、なんというか、こう、宇宙の上から地球を見渡すぐらいの俯瞰した広い視野で世界を見渡してみても良いのかなと思います。

 

自分も宇宙飛行士になったような気分で!

 

そして、世界の母語と言う概念から、世界で使われている言語の事を少し考えてみたいと思います。

 

さて、2005年の資料を元に文部科学省がまとめた資料によると、世界の母語言語トップスリーは

1位 中国語(885)
2 位 英語(400)
3 位 スペイン語(332)

となっています。

404error:文部科学省

 

このデータですが、中国は人口が多いから1位で、アメリカの人口も多いから2位で……と、そんな単純なものではないようです。

 

母語と公用語と使われている言語との3つにわけて行くと、話がさらに複雑になっていくので、ここではそこまで深掘りはしませんが。

 

それでも世界規模で見て行くと、他の国は日本ほど単純ではなく、母語言語2位の英語は、イギリス、アメリカ以外にも、カナダでも使われているのは、みなさんご存じだと思います。

 

そしておもしろいのが、カナダの公用語(カナダで共通語として定められた言語)は日本のように単純にひとつだけではなく、フランス語と英語の2つとなっています。

 

ちなみに、アメリカの公用語は特に定めはないそうです。

でもアメリカのみなさんは英語を使ってらっしゃいますよね。

 

同じアメリカでも西と東、中部に南部など、場所によってアクセントが違うのは、世界各国共通する所だと思います。

 

インドではヒンディー語が共用語なのですが、憲法で公認されている州の言語は、なんと21もあるそうです。

 

インドの人ってみんな英語で話すって聞くけど本当?という質問を、実際にインド人の友人に聞いたことがあるのですが、場所によって言葉が違い過ぎて話が通じないので、インド人同士は英語で会話すると言っていました。

 

ブログ読者のみなさまもご存じかと思いますが、中国の三国志という歴史ものが有名なように、中国以前は沢山の国が存在していた訳ですよね。

 

中国の事なんか言われてもわからない!と言う人がもしいるのであれば、日本にも戦国時代と言うのがあって、天下統一された後、いまの日本になった訳ですよね。

 

当時の日本国内でも話が通じない!という事はあったと想像ができます。

 

現在の世界各国で用いられている言葉というものは、最初は支配された結果だったり、移住してきた人達が使っていて広めた物だったりしたのかも知れませんね。

 

そんな中で国を治める側は、国民同士で話が通じないのでは通達も定めも理解してもらえないし、一向に政策が先に進まないので、公用語を定めたりしていったのかなと推測します。

 

 

台湾の公用語の歴史

 

台湾にはアメリカ大陸やオーストラリアのように、もともと先住民が住んでいました。

そしていまも台湾ではたくさんの種族の先住民の方たちが生活しています。

 

その何十種族ともいわれる先住民の方たちのルーツをたどると、オーストラリアと同じ民族だったり、他の島との関係をも感じさせるものがあります。

 

台湾はどこの国?

台湾の人たちは何語で話してるの?

 

そう考えたとき、日本人にいちばん想像しやすいのはオーストラリアかもしれないと、私は思います。

 

オーストラリアはアジアの島で先住民が住んでいたけれど、ヨーロッパの人たちが移住して来たのですよね。

 

そしてオーストラリアの人たちは英語を使って生活しています。

ここの先住民の方たちはもともと英語を話していたわけではないでしょう。

 

この方たちに後から来たヨーロッパ人が強要して「先住民の言葉で話す事を禁止」するか、この方たちが英語の方しか使わないからもういいやと、自分たちの言葉を捨てれば、「先住民特有の言葉」は消滅してしまうでしょう。

 

台湾にはもともと何十種族といわれている先住民がいます。

そこに今の中国の場所に以前あった、沢山の国の人たちが、それぞれの文化と言語を持ったまま移民として住み始めたり、航海の途中で流れ着いて生活して来ました。

 

台湾の現在の公用語は中国語ですが、台湾政府からの「自分たちのルーツを大切にしよう」という働きかけのおかげもあって、台湾と言う小さな島の中では、中国語の他にもたくさんの言葉が使われています。

 

台湾の公共交通機関で使用されているのは4言語

 

台湾の公共交通機関では複数の言語でアナウンスされる事も少なくありません。

 

私は台湾北部で生活していました。

そこで市民の足となる台北地下鉄(MRT)の車内では、中国語、台湾語、客家語、英語の順にアナウンスが流れます。

 

またバスの案内も中国語、台湾語、客家語が必ず流れます。

 

英語に関しては外国人観光客への配慮だと思いますが、台湾語と客家語は、中国語が公用語になるよりも前の世代への配慮として、また台湾の文化として台湾語、客家語をこれからも使って行こうという意思の表れだと思っています。

 

その証拠に台湾の小学校では台湾語の授業がありますし、客家語や先住民文化についても教育しています。

 

 

台湾人でも台湾語は話せない

 

日本の若者は、テレビなどのメディアの影響を強く受け、昔ながらの方言を話せなくなっていると親世代から聞いたことがあります。

 

方言を話すには話すけれど、それより前の世代から言わせれば、徐々に標準語化されて来てしまっているというのです。

 

地方出身者の両親を持つ私は、両親の方言を聞く事は出来ても、話す事は出来ません。

 

両親の故郷へ行って、町から一歩も出た事がないという人の話を聞くと、何を話しているのかまったくわからない事も本当によくあります。

 

台湾でも両親や祖父母が台湾語、客家語を子供に教育していない家庭だと「聞けばわかるけど、話せない」という子が多くなります。

 

第二次大戦後日本人たちが台湾から去った後、中国国内の内戦によって台湾に移り住んで来た人達や、その子孫だったりすると、そもそも台湾語や客家語とは無縁のルーツの人たちがほとんどなので、中国語しか話せないのです。

 

この時期に移り住んできた人たちのことを、台湾では特別な呼び方で区別する事があります。

 

レアケースだとは思いますが、内戦の時期に台湾に渡って来た人たちの子孫であっても、もともと台湾語を話す文化がある家系で、台湾語が話せるという人に、一人だけ会った事があります。

 

このように台湾では人々のルーツは本当に様々で、言葉だけでは、その人たちの祖先がいつどのように台湾に移り住んできたのかを知るのは、実際にはとても難しかったりします。

 

さて、先住民の方たちはどうかというと、(最初は強要された)共通語の中国語も習得し、話せる方がほとんどだと思いますが、先にお話ししましたように、自分のルーツ(文化)を大切にして欲しいとの近年の台湾政府の働きかけもあって、民族の言葉や文化を継承し、使用されています。

そしてそれぞれの伝統的お祀りや文化も継承し続けています。

 

余談ですが、日本人旅行客が多く訪れる中山という駅では、「なかやま」という日本語のアナウンスが流れるようになりました。

 

 

台湾で使っている中国語は他では通じないという誤解

 

こんな風に台湾を理解してもらう為には沢山の事を語らなければならなりません。

 

そしてここでまたよくある誤解が「台湾で使っている中国語は通じないんでしょう?」という誤解です。

 

実際にグローバル企業の面接官や、外国と取引をしている会社の方々にも聞かれました。

 

「台湾って広東語ですよね?」

 

何度でも答えましょう。

台湾の公用語は中国語です。

 

そういうと、こんな質問をまたされそうですね。

 

「台湾は中国語で、北京語ではないですよね?」

 

「台湾では、マンダリン使ってるんですよね?」

 

 

マンダリンとか、なんとか、私にはよくわかりません。

 

でもその理屈で言えば、日本で話されている日本語と、海外にいる日系何世かの人が使っている日本語が違うといった区別になってしまうと思うのです。

 

実際には、日本語は、日本語ですよね?

 

ただ、それだけですよね。

 

私が、通じますと言っても信じない人がいます。

なら喋って見てよ。と、試そうとする人もいます。

 

なんと、疑い深いのでしょう。

 

 

日本語にも地域によってアクセントがありますし、方言もあります。

 

東京ではマクドナルドと言いますが、関西ではマクドという地域があります。

 

東京ではUSJと言いますが、関西ではユニバという地域があります。

 

 

これはどちらも日本語です。

 

「でもそれって東京弁ですよね?」

「でもそれって、大阪弁ですよね?」

「だけど、だけど、それって京都弁ですよね?」

 

「通じないんじゃないですか?」

 

 

 

と、日本語で質問しているのと同じなんじゃないのかな……。

なんで理解してもらえないんだろう?とさえ、思います。

 

 

標準語に対して、津軽弁は確かに聞き取るのが難しい言葉でしょう。

 

中国語と台湾語(閩南語:ビンナン語の台湾で使われているものバージョン)や、広東語の関係が、ちょうど日本語と津軽弁や沖縄地方特有の言葉との関係性に似ているかも知れません。

 

でも日本語は、日本語ですよね。

日本の津軽と言う地方で使われているのが津軽弁です。

だけど実際には私たちは、日本語の標準語で会話するようにしています。

 

 

中国語も、中国語です。

台湾では中国語を標準語として会話しています。

 

 

ちなみに、外務省の基本情報では中華人民共和国(中国)の公用語も、中国語と書いてあります。

どこにも北京語と書いていませんね。

 

広東語は広東地方の言葉です。

北京語も、北京と名前がついた時点で、北京地方の言葉なんだな、と感を働かせると理解しやすいかもしれません。

 

上海語も上海地方の言葉です。

 

東京、神奈川、千葉、埼玉、栃木、群馬、茨城と、近隣ですが厳密に言えば言葉の使い方も少しずつ異なります。

 

そういったものが北京語や上海語ではないのでしょうか。

 

マックとマクドでは言い方が違いますが、同じファストフード店の話をしています。

地域の違いがわかれば、話が通じないことはありません。

 

相手の地域のアクセントが強ければなんども「えっ?」と聞き返すかもしれませんが、話が通じ無いというほど大袈裟なものではありません。

 

中国語話者同士でも同じような事は起こり得ます。

だけどそれは、話が全く通じなくなるような、大袈裟なものではありません。

 

 

台湾帰りの人にもっと就職の機会を!

 

台湾で学んだ中国語が通じない事は決してありません。

もし通じないのだとすれば、その人の習得度合いの問題です。

 

実際に台湾では他国出身の中国語話者の人たちと中国語でたくさんコミュニケーションを取って来ました。

 

そこに国境はありません。

中国はもちろん、マレーシア、シンガポール、西側諸国の友人たちとも中国語で何不自由なく生活して来ました。

 

イギリス英語とアメリカ英語では少し違いますが、同じ英語です。

イギリス英語だから、アメリカ英語だから、オーストラリア英語だから、インド英語だからといった理由で通じないとか、違うという先入観は必要ないと思います。

 

確かに聞き取り辛い地域もありますが……、それでも言葉はコミュニケーションの為に必要なものであって、どこの発音がきれいとか、完全に通じないといった大袈裟な問題ではないはずなのです。

 

もしこれを読んでいる中国語を必要としていらっしゃる企業の採用ご担当者様がいらっしゃれば、もっと台湾から帰国した人にも、中国語を使ったお仕事の機会を与えてあげてください。

 

台湾で学んだ中国語でも、その方がきちんと習得してさえいれば、絶対に通じます。

 

 

台湾で使われている言語のまとめと豆知識

 

  • 台湾で使われているのは、中国語。

 

ただし漢字は繁体字と呼ばれる、昔の日本と同じ、すなわち旧漢字と共通する物が多い。

 

最近の若い子はYouTubeをよく見ていて、中国簡体字字幕のものも見慣れているので、略字体の簡体字もぜんぜん余裕で読める。

 

メモする時はこっちの方が速いよね!と、簡体字で書く子も見た事がある。

 

 

  • 台湾には多民族、多文化の人たちが住んでいる

 

台湾には何十種族ともいわれている先住民のほか、中国の前身のたくさんの国があった時代に移民や流れ着いた人、大二次世界大戦後の中国内戦時に移住して来た人たちがいる。

 

また、オランダ、スペインなどから来た人や、日本から移住して来た人たちとの混血と思われる方々もいる。

 

最近は少子高齢化で働き手としてインドネシアやベトナムからの移民も増えている。

 

  • どこで習った中国語でも通じる

中国語はあくまでも中国語なので、中国で学ぼうが台湾で学ぼうが、マレーシアやシンガポールで習得しようが通じる。

 

広東語、ビンナン語などのように「地域+語」と呼ばれるものは方言なので、共通語である中国語とは区別して考えよう!

 

文字としては、中国本土で使用している簡体字と、香港や台湾などで使用している繁体字とがあり、繁体字の方が日本人には馴染みがある漢字。

 

中国でも古文書は繁体字に近い漢字を使っているので、伝統的な物を学んだ人は中国人であっても繁体字の読み書きが出来るだろうし、台湾人でも中国本土の文献を調べるために簡体字の読み書きが出来る事が多い。

 

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